山形県中小企業団体中央会
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組合名山形印刷団地協同組合(山形市)
設立昭和50年8月 組合員 11人
組織形態 工場団地組合 主な業種 印刷、印刷物加工製版
出資金 2,840万円 地区 山形市
組合従業員 5人

〜共同受注事業による全国市場展開と人材育成事業〜

東京営業所と山形の拠点を結んだトータルな受注・生産・配送システムを確立し、組合員に利益を還元している。また時代の変革に合わせた人材育成事業にも積極的に取り組んでいる。

【事業の背景】

 昭和58年に、前理事長の知人が東京におり、紹介を受けたのがきっかけで、東京に営業の拠点を設けることとなった。
 それ以前から、組合員同士で受注した仕事を他の組合員や外部の業者に外注することは一般的に行われていたが、東京営業所開設をきっかけとして、組合名で仕事を受注することが本格化した。
 外注する場合は、なるべく団地組合内の業者に出したほうが、細かいところまで目が届き望ましいということも、組合による共同受注が拡大する動機となったといえる。

【経緯】

 受注、版下作成、印刷、製本から発送まで、すべて組合員で処理できるという強みをいかすシステム作りを考案し、定着させている。
 教育関係の印刷物は、教科書などの改訂時期に受注が集中するという特徴がある。全国には、学研、ベネッセといった大手企業を筆頭に、数多くの教科書・教材会社が存在しており、これらの企業を対象として、受注は東京営業所が中心となって行い、山形の組合で印刷・製本まで仕上げ、組合管理の配送センターから直接顧客の元に送付している。

【事業活動の概要】

 共同受注事業として、主に東京営業所において教育関係の印刷物を受注し、全国に出荷している。 昭和58年に開設した東京営業所(従業員3名)において、積極的な営業活動を展開し、教科書・教材出版社等から受注し、原稿データを山形の組合事務所に送ってもらう(郵送・ファックス・オンライン)。
 組合ではこれを組合員に振り分け、印刷・製本する。そして、組合員の1社が有する配送センターから、全国の取引先(学校・塾・個人宅等)に直接配送するというシステムである。組合では20%が手数料収入となる。

【成果】

 組合名で営業活動を展開し、組合員企業に利益を還元するというシステムは、開始後10年以上を経ており、着実な成果を上げている。売上高も年度により変動はあるが、4〜7億円という規模になっている。
 組合員企業が得意な分野を担当することによって、効率的な業務処理ができている。自社で処理できない仕事であっても、無理に設備や人員を増強することなく、信頼できる組合員に委託して処理できるため、受注する仕事の幅も広がっている。
 またこのシステムにより、全国各地に顧客を確保することができ、地理的なハンディはほとんどないといってよい。
 このような実績により、仕事を外注する場合はなるべく組合員同士で、という考えも定着してきたといえる。

《詳細内容》

【1】実施事業の内容(平成10年度実績)

事業名
  • (1)第一種中小企業人材確保事業
  • (2)共同受注事業
  • (3)共同駐車場貸付事業
  • (4)金融事業

【2】組合員の経営環境

(1)組合員の経営環境

きわめて厳しい経済状況が続くなか、当業界も受注の低迷と技術革新の急激な進展、特に電子化、コンピュータネットワークの進展という変革期を迎え、一企業の努力だけではこれらすべての課題に対処することは困難な情勢にある。
また受注の小口化、値引き要求や、同業者間の価格競争により、業況の悪化が目立ち、組合員の中でも倒産に追い込まれたところもでてきた。
このような時代には、印刷団地内の各企業の特色を発揮し、受注・生産の相互補完の充実と、情報産業体制の確率が急務になると考えている。

(2)組合員の企業規模
雇用従業員数人0〜10人11〜50人51〜100人101〜300人300人以上
組合員比率(%) 919  

【3】組合の沿革

  • 昭和50年:組合設立
  • 昭和54年:10社移転
  • 昭和55年:2社移転
  • 昭和58年:4社補完事業
  • 昭和59年:1社移転し組合加入
  • 平成2年:2社補完事業

【4】取り組みの内容

(1)種類

東京営業所による教科書等の共同受注

(2)内容

組合の東京営業所(文京区)において、営業社員が教科書会社等から受注する。
営業所の体制は男性2人、女性1人となっている。
受注した原稿等は、郵送、ファックス、オンラインなどで山形の組合事務所に送られる。
組合ではこれを各組合員に振り分け、組合員各社は印刷製本までを受け持つ。
できあがった製品は、組合員の1社が所有し組合で管理している配送センターから、顧客へ配送される。
組合では手数料として、平均20%を徴収し、山形の事務所と東京営業所の運営経費に充てている。

(3)事業の仕組み

東京都内に営業拠点を有していること。
組合管理の配送センターから、全国各地の顧客の元へ、個人宅も含めて、直送できること。

(4)物的施設・機器等の状況

受注処理用のパソコン。
配送センター(運営自体は組合員企業の1社、管理のみ組合が実施)

(5)取り組みに要した経費の状況

共同受注事業収入は、3億3,948万円、共同受注事業費支出は2億8,709万円(平成10年度)となっている。共同受注事業費には、仕入れ及び外注費、見本費、荷造運賃が含まれる。
東京営業所の人件費等の経費は、受注した業務の手数料(平均20%)の中から拠出している。
これらの経費は、組合本会計において処理されている。

(6)取り組み開始後の事業の推移・変更点、問題点と克服状況等

東京営業所の営業努力や、組合員同士の協力体制により、受注は堅調であるが、教科書という特性上、改訂年度に受注が集中する傾向があるのはやむを得ない。従って売上高も、年度により4億〜7億と変動してきた。
問題点としては、東京営業所から原稿等のデータを山形に送る場合に、データ量が膨大であるため、電話回線を使ったオンライン電送では時間がかかりすぎるため、郵送という方法に頼らざるを得ないことである。
高速・大容量の専用線は高価であるため、ケーブルテレビ接続を使ったインターネットによるファイル送信システムを研究しているところである。

【5】事業推進体制・運営体制

(1)組織の特徴とポイント

組合の共同受注事業として実施しており、独立した組織体制はなく、決算上も組合本会計で処理されている。

(2)事業推進上の運営体制と事務局体制の状況

東京営業所は、社員3名(男性2名、女性1名)、男性社員が営業を担当。
山形事務所は、事務員5名(男性2名、女性3名)

【6】その他特記事項

今年度は、来春卒業予定の専門学校生、短大生、大学生を対象に、「模擬新入社員研修」を実施した。
実際の採用につながったところはほとんどなかったが、学生の当業界に対する関心の高さを伺い知る機会となった。

【7】今後の課題と方向

紙ベースの印刷物から、多メディア時代へ歴史の転換点を迎え、印刷業界は今までの業態見直しを迫られているところである。
さらに、小子化による学童の減少が進み、教科書・教材市場は大きな成長は難しい。
このように市場環境が厳しさを増す中、企業としての取り組み課題は、ISO認定取得、接客サービスの訓練、技術の高度化、マルチメディアへの対応など、数多い。
組合の役割も、このような時代変化に対応できるような、「教育事業」や「人材育成」事業が中心的なテーマとなってくるものと思われる。
経営者・管理者の意識改革や、従業員の技術の高度化、紙以外のメディアへの対応等を進めるため、研修会の積極的な開催や、外部専門家の有効活用などが求められるところである。

【8】ポイント 要点と成果

顧客大企業が集中する首都圏(東京都)に営業拠点を設け、ここで受注した業務を組合員が分担して処理し、配送センターから一括輸送するというシステムを確率したこと。
組合員の間で、お互いの得意分野を生かし、相互に業務を外注するという友好関係が築かれていること。

【9】活動の要点

組合名で営業活動を展開し、受注した業務を分担して処理することで、組合員に利益を還元することを目標として、システム作りにつとめてきた。
受注〜製版〜印刷〜製本〜配送までのすべてを、組合内で処理できるシステムである。
事業概要は、東京営業所において、教科書・教材出版社等から受注を受け、原稿データを山形の組合事務所に送ってもらい(郵送・ファックス・オンライン)、これを組合員に振り分け、印刷・製本し、配送センターから、全国に直接配送するというものである。
また組合では、人材育成・教育訓練事業をこれからの重要テーマと位置づけており、研修会や先進企業視察を通じて、技術の高度化や資格認定の取得に努めていこうとしている。

【10】成果と成功要因

営業の拠点を東京に置いたというマーケティング戦略が、成功の大きな要因である。
これにより地方の限られた市場ばかりではなく、全国市場を対象とした受注が可能になっている。
組合員同士の信頼関係や連帯感も大きな成功要因である。お互いの得意な業務分野を生かすことにより、効率的な設備投資や経営ができている。
また、組合に配送センターを有することにより、全国各地の学校・塾・個人宅へ直接製品を出荷することが可能になっており、顧客企業からの信頼感を高めるのに大いに寄与している。

【11】所見

共同受注事業は、開始後10年以上を経ており、システムとして定着しているといえる。
組合員に直接利益を還元できるシステムであり、今後も重要な事業として継続されてゆくことは間違いない。
今後の課題としては、組合でもすでに認識しているように、時代の変化に応じた人材育成と技術の高度化対策であろう。紙の印刷物から、マルチメディアへという時代の大きな転換点を迎えており、組合員も新しい技術の修得の必要性を切に感じているところである。
研修会や資格取得講座の開催、先進企業の視察などを通じて、積極的な人材育成と教育訓練事業を展開し、組合員の知識・技術の高度化と、業態の変革に資する組合を目指すことが求められている。


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